非常用照明器具とは、地震、火災その他の災害、事故などにより停電が発生した場合に、人々の建築物からの避難に際して、秩序ある避難行動を可能にするための照明設備のことをいいます。つまり、火災等により電気配線の断線が発生するなどして停電になってしまった際に、自動的に非常電源に切替わり、室内や通路を明るく照らします。
非常用照明器具は、大きく【蓄電池】【器具】【光源(ランプ)】【点灯形態】の4つの要素から構成されています。
蓄電池
電池内蔵型
照明器具内部に蓄電池が組み込まれている照明器具です。
火災などにより電気配線が切断されても、自動的に内蔵された蓄電地により点灯します。
小規模なビルで採用されています。
電源別置型
蓄電池設備を別に用意する必要がある照明器具で、停電を検出すると、自動で予備電源に切り替わり点灯します。
中規模以上のビルになると、共用部(エントランス・廊下等)は電池内蔵型、テナント等が入る占有部は電源別置型が採用されることが多くなっています
器具
器具の種類は【露出型】【下面開放型】【簡易密閉型】の3種類あります。
露出型
天井に直接器具を設置するタイプです。
使用場所は選びませんが天井から直接照明器具が出ているので、器具自体の存在感があります。
下面開放型
天井に器具を埋込み、蛍光灯にカバーをしていないタイプです。
デザイン重視で外観を気にする店舗や事務所に多く使用されています。
簡易密閉型
天井に直接器具を設置し、蛍光灯にカバーをしているタイプです。
デザインよりも耐久性重視で、倉庫等で使用されています。
光源(ランプ)
光源(ランプ)の種類は【直管蛍光ランプ】【コンパクト蛍光ランプ】【LED】の大きく3つに分けられます。
直管蛍光ランプ
直管蛍光ランプは、棒状の蛍光灯で、多く普及しているため安価で、また部屋全体に明るさが行き渡る為オフィスや工場、倉庫などで多く使用されています。
コンパクト蛍光ランプ
コンパクト蛍光ランプは、蛍光灯の管を曲げていて、形状が小さい蛍光灯です。ダウンライトのように、小型な器具に設置できるため白熱灯に代わり多く使用されています。
LED
LEDは、寿命が長く、省エネであることから、家庭の照明はもちろん、自動車の照明や交通機関などで幅広く使用されています。
点灯形態
常時と非常時の点灯の仕方には種類があります。それを点灯形態といいます。
点灯形態には、【専用型】【併用形】【組込形(埋込形)】の3つがあり、設置する場所の設置基準を満たしていればどの形態でも構いません
専用型
光源(ランプ)がひとつで、平常時は消灯しており、停電時に点灯するタイプ。
併用型
光源(ランプ)はひとつですが、平常時には通常電源で点灯し、停電時は非常用に自動で切り替わり点灯するタイプ
組込型(埋込型)
平常時と、非常時用の二つのライトがあり、停電時は非常用ランプの方が点灯します。
その他の非常用照明として、停電時に私達がスムーズに避難できるように設置されている照明があります。それが誘導灯です。
非常用照明と併用することが義務付けられています。
設置基準
非常用照明は、一定規模以上の建築物に設置しなければならない防災設備である。規定されている規模は、
- 劇場、病院、ホテル、共同住宅、福祉施設、飲食店、物販店舗等の不特定の者や多数の者が利用する建築物の居室
- 階数3以上かつ500㎡超の建築物の居室
- 採光上有効な開口部の面積が、床面積の1/20未満の居室
- 1,000㎡超の建築物の居室
- 1〜4までの居室から地上に通ずる廊下、階段、ロビー等の通路
これらに該当しない建築物であっても、所轄消防などから非常用照明の設置を指導される場合があります。例として、機械室やポンプ室に、非常用照明を設置する事例は多いです。
免除基準
- 採光上外気に開放された廊下、階段その他の通路
- 一戸建の住宅又は長屋若しくは共同住宅の住戸
※一戸建てのみ適用で、共同住宅棟は必要 - 病院の病室、下宿の宿泊室又は寄宿舎の寝室その他これらに類する居室
- 学校等
- 以下2点を満たす居室
(1)施行令第116条の2第1項第一号の窓がある事
(2)避難階とその直下階、直上階ですぐ避難できる事
(3)避難経路に非常用照明があり、かつ30㎡以下の居室部分
誘導灯
誘導灯とは、避難を容易にするために避難口や避難方向を指示するための照明設備のことです。普段は常用電源により点灯し、火災時等による断線や停電などの非常時には自動的に非常電源に切替わり、暗闇でも十分その効果を発揮します。
誘導灯は「消防法施行令第26条」と各地方自治体の火災予防条例などによって、劇場・旅館などの人の多く集まる場所に設置が義務づけられています。
誘導灯設置は義務ではありますが、避難口へ誘導を行うため視認できるものでなくてはなりません。その為設置場所によりA級(40cm角)・B級(20cm角)・C級(10㎝角)の3種類あり、所轄行政の法令に従い設置しなくてはなりません。
非常用照明との違い
「非常用照明」とは、停電の際に室内、廊下、階段などを照らしてスムーズに避難を行うための照明のことです。バッテリーを内蔵しているものと、電源別置のものがあります。停電時に30分以上点灯し、避難経路を照らし、安全かつ速やかに避難できることが法律によって定められています。建物に設置している場合は1年毎に建築設備点検の実施が義務になります。
次に「誘導灯」ですが、こちらも火災や事故が発生した際に人々が迅速・安全に避難するための装置で、「非常用照明」と同じです。しかし「誘導灯」は、非常口(避難口)や誘導経路を教えるためのもので、室内や廊下を照らすためのものではありません。非常用照明は「速やかに避難するために必要な最低限の明かりを提供する灯」ですが、誘導灯はその名の通り「避難口や避難する道筋をガイドする灯」ということになり、設置している建物は6か月ごとに消防点検の実施が義務になります。
目的別種類
目的に合わせて【避難口誘導灯】【通路誘導灯】【客席誘導灯】【階段通路誘導灯】の4種類があります。
設置基準
- 不特定多数の方が利用する100㎡を超える部屋の出入り口や特定の方が利用する400㎡を超える部屋の出入り口
- 直通階段の出入り口が分かるよう設置
- 室内から廊下や通路に通じる出入り口
- 室内から通じる廊下や通路に設置されている直接手で開けられる防火戸
避難口誘導灯
緑色の地色に白色の矢印で避難出口の場所を示す
免除基準
- 室内のどこからでも部屋の出入口がすぐわかり、出入口とすぐ判断できる場合で、床面積が100㎡以下の場合。
- 室内のどこからでも避難口が簡単にわかり判断できる場合で、かつ、その歩行距離が避難階においては20m以下であり、避難階以外では10m以下の場合。
通路誘導灯
白色の地色に緑色の矢印で避難出口のある方向を指し示す
免除基準
- 居室内の通路誘導灯の除外基準
居室内のどの場所からでも避難口(非常出口)、又は避難口の上部に設置されている避難口誘導灯を容易に見通せ誘導灯と判別できる場合で避難口までの歩行距離が30m以下(避難階の場合は40m以下。)※無窓階は除く。 - 廊下等の通路誘導灯の除外基準
廊下及び階段で日の出から日没までの間のみ使用しており、その間は自然光により避難上必要な照度が確保できる場合。 - 共同住宅での通路誘導灯の除外基準
共同住宅で個人の住居スペースには通路誘導灯の設置は除外。
客席誘導灯
映画館や舞台などの客席のある施設で足元を常時照らす
免除基準
- 観覧場等が屋外にあって避難するために外光によって一定の明るさを確保できる場合は客席誘導灯の設置を除外されます。
- 出入口である非常口には避難口誘導灯が設置され常時明かりが点灯しています。
この避難口誘導灯の近くの客席で避難に必要な照度が確保される場合には客席誘導灯の設置を除外されます。
階段通路誘導灯
客席誘導灯と同じく階段や傾斜路に設置して一定の明るさを保つ
免除基準
- 屋外階段
外光によって避難するための明るさが確保される外階段は階段通路誘導灯の設置を除外されます。
- 住居の階段
防火対象物の内、寮や共同住宅等、個人の住居に利用する階段は階段通路誘導灯の設置を除外されます。
弊社では事業用不動産に特化したビル管理運営業務を行っております。
建物の建築構造のみならず、不動産に関して幅広い知識を持っておりますので何かお悩みがございましたらお気軽にご相談ください。
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