ビルには様々なテナントが入る上で用途別で水を扱う場面がございます。
例として事務所ではトイレや洗面、店舗では調理場や流し台などがございます。そこで今回の記事ではビルの給水方式に関してご案内いたします。
基本的なビルの給水方法は2つに分かれます。それぞれの給水方法とメリット、デメリットに関してご案内いたします。
1.水道直結方式
水道直結方式は2つの方式が現在使用されております。
直圧直結方式
3階までの事務所などへ、受水槽や増圧装置を使用しないで、直接蛇口まで給水する方式です。自治体によっては5階まで給水が可能になります。
詳細は水道局に確認になります。
増圧直結方式
配水管から敷地内の建物に引き込まれる給水管の途中に増圧装置(ポンプ)を取り付け、受水槽を経由せず、各フロアの蛇口まで給水する方式です。停電時においても、配水管の圧力で5階程度までの低層階への給水ができます。
増圧直結方式は多くの水道局でメーターバイパスユニットの設置が義務化されております。
メーターバイパスユニットとは旧式設備の交換時に断水しないように給水ルートを確保する設備になります。
直圧直結方式 | 増圧直結方式 | |
---|---|---|
メリット | ・停電への影響がない。 ・専門業者による貯水槽の清掃や水質検査が不要。 ・受水槽など不要になり、スペースを有効活用できます。 ・管路の破損、配水池の水不足がない限り断水が起こらない。 ・衛生的な水を直接給水可能。 | ・専門業者による貯水槽の清掃や水質検査が不要。 ・受水槽など不要になり、スペースを有効活用できます。 ・衛生的な水を供給可能。 ・停電時は上水道管の圧力で給水が可能。 *但し3階以上は給水に一定条件があり、詳細は水道局へ連絡になります。 ・水圧は増圧ポンプで調整できる。 |
デメリット | ・工事や災害時、水道本管の影響をそのまま受ける ・断水すると給水できない ・3階建て以下の建築物のみ適用 *自治体によっては5階まで適用 | ・工事や災害時、水道本管の影響をそのまま受ける ・ポンプの定期的な点検が必要 *年に1度以上が義務 ・断水すると給水できない ・増圧ポンプのスペースが必要。 ・地域によっては認可されない。 ・3~5階建ての建築物のみ適用。 |
2.貯水槽方式
貯水槽方式は上水道管からの水を受水槽に貯めて給水する方式です。
受水槽を利用した給水方法で、2つの方式がございます。
ポンプ圧送方式
受水槽に貯めた水を加圧給水ポンプで各階に給水する方式
高置水槽方式
受水槽に貯めた水を揚水ポンプで高置水槽へ送り、自然流下で各階に給水する方式
ポンプ圧送方式 | 高置水槽方式 | |
---|---|---|
メリット | ・高階層にも給水できる。 ・水圧はポンプで調節できる。 ・断水しても受水槽と加圧ポンプで給水できる。 *ただし給水できる上限は受水槽に残っている水量のみ | ・高層階にも給水できる。 ・重力で給水するので水圧は一定。 ・断水しても給水できる。 ・停電しても給水できる。 *ただし給水できる上限は受水槽、高置水槽に残っている水量のみ |
デメリット | ・水質汚染を起こさないよう、受水槽の清掃が必要。 ・停電すると給水できない。 ・受水槽と加圧給水ポンプのスペースが必要。 ・水槽の容量によって水質検査が必要 | ・水質汚染を起こさないよう、受水槽、高置水槽の清掃が必要。 ・受水槽と揚水ポンプ、高置水槽のスペースが必要。 ・設置コストがかかる(高額) ・水槽の容量によって水質検査が必要 |
有効容量10㎥水槽がある場合、年に1回以上の清掃や検査が必要になります。
10㎥以下でも清掃や検査が望ましいです。
これらは水道法第4条に基づく水質基準として規定されています。
またビル衛生管理法という法律の下、ビルを衛生的に保つための施策として「給水および排水の管理」、「清掃」が上記項目に該当いたします。
いかがでしょうか。
給水方式の決定をするときはまず水道局で地域の給水方法や給水量を確認します。
また、建築物の種類によっても給水方式を考慮して決定しなければなりません。
飲食店など事業用として扱う建築物は水道直結方式を選択すると断水の場合に営業または事業がストップしてしまうリスクがございますが他方で貯水槽方式の場合、定期的な水槽の清掃作業・水質検査で数時間の断水するケースがございます。
最近は古い建物において貯水槽方式から水道直結方式への切り替えがございます。
水槽の清掃が不要な点と排水管の水圧で利用できるので省エネ効果(二酸化炭素の削減効果)がありSDGsの目的の一つである温室効果ガスの排出量の削減が可能です。
所有する建築物に入居するテナントの業種を検討した上で給水方式を決定しましょう。
余談ではございますが、水道のメーター設置条件も水道局に確認が必要になります。
水道メーターは8年で交換することが決められています。
上記のメリット・デメリットを参考にした上で給水方法を決定する際は「まず水道局に確認する」と覚えておきましょう。
弊社では事業用不動産に特化したビル管理運営業務を行っております。
建物の建築構造のみならず、不動産に関して幅広い知識を持っておりますので何かお悩みがございましたらお気軽にご相談ください。
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