更新後の連帯保証人の責任

連帯保証人は、建物賃貸借契約における責任として、賃借人の負うべき債務の全てを保証することとなります。例としては、賃料の不払い時の賃料支払い義務や、原状回復をせずに明渡しをした際の原状回復義務などです。このように、連帯保証人には、非常に大きな義務が課されることとなるのです。

建物賃貸借契約が取交される場合、連帯保証人は所定の欄に直筆での署名や、実印での捺印を求められる(実印であることを証明する印鑑登録証明書の提出も求められます)ことがほとんどです。これは、先に述べた多大な義務を課されることに、連帯保証人が承諾したという意思確認を強固にし、より有効な連帯保証契約の締結にするためであります。

ところが、更新契約の際には、連帯保証人が遠方にいるなど署名や捺印をするのに不便である場合に、それらを割愛してしまうケースがあるようです。この場合、更新後の建物賃貸借契約において、連帯保証契約は有効であるといえるのでしょうか。平成9年の最高裁で、いくつかの要件のもと、有効であると判決がされております。それでは、そのいくつかの要件をみていきたいと思います。

 

要件①

新規契約時に、所定の欄(別紙でも可)に連帯保証人の直筆での署名、実印での捺印(併せて印鑑登録証明書の提出)をさせる。これは、先にも述べたように、連帯保証人の意思確認を強固にするためです。

要件②

建物賃貸借契約書の条項に「連帯保証人は、賃借人と連帯して、本契約から生じる一切の債務を負担するものとする。本契約が合意更新あるいは法定更新された場合も同様とする。」などの文言を盛り込み、連帯保証人の責任範囲を明示する。これは、更新契約時に連帯保証人の署名や捺印がなくとも、連帯保証契約が更新後も継続することを、連帯保証人に意識づけるためです。

要件③

賃借人が継続的に賃料の不払いをしている場合、連帯保証人に都度通知をしていること。これは、賃借人の継続的な不払いがあるにも関わらず、連帯保証人に通知などをせずいたずらに契約更新をした場合、信義則に反すると看做され連帯保証契約が認められない可能性があるためです。

要件④

普通建物賃貸借契約であること。これは、更新のない定期建物賃貸借契約の場合、期間の満了により契約が終了し、その後に取交される再契約は全て新規の契約と位置付けられるためです。そのため、再契約時に連帯保証人が署名や捺印をせずに契約した場合、連帯保証契約が有効に成立しないこととなります。

 

以上の4つが必要要件となります。

なお、当社ではこのようなトラブルを回避するため、更新契約時にも必ず契約書に連帯保証人の直筆での署名、実印での捺印(併せて印鑑登録証明書の提出)を頂くよう徹底しております。その上で、さらなるトラブル回避のため、普通建物賃貸借契約の条項に、以下の文言を盛り込んでおります。

「連帯保証人は、賃借人と連帯して、仮に連帯保証人が更新契約書に署名捺印していなくても、また、法定更新された場合でも、本契約が存続する限り、本契約から生じる賃借人の一切の債務を保証するものとする。」

このような文言を盛り込むことで、要件②の内容がより明確なものとなり、連帯保証人への連帯保証債務の範囲の意識づけが、より強固になると考えられます。もし宜しければ今後の契約のご参考にして頂ければと思います。

また、連帯保証人の署名・捺印を、契約書ではなく別紙(連帯保証人承諾書など)で頂くケースがありますが、連帯保証人が契約内容を把握していないと判断され、連帯保証契約の有効性が否定される可能性があるようです。そのため、なるべく契約書への署名・捺印を頂くことをお勧め致します。

なお、120年ぶりの民法大改正が控えており、連帯保証人の内容についても、大幅な改正が盛り込まれているようです。今後、このような動向についても注意を払い、ビル運営・経営をする必要がありそうです。

当社では、連帯保証人の内容に関わらず、これまでの管理上のトラブルなどを基に、契約の様々な内容を改善し続けております。もし契約の内容に不安などありましたら、当社までご相談下さい。

 

 

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By | 2017年7月19日

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